イブキの短編小説

1000字短編集・素朴な暮らしの欠片を拾う

2021-05-25から1日間の記事一覧

それを知る前の自分にはもう戻れない【短編】

汗にまみれ、吸っているのか吐いているのか分からなくなるほど呼吸のリズムを乱した私を前に、それは呆気なく閉じた。加速度を上げて動き出した電車は大げさに風を起こして、私の鎖骨に溜まった汗を嫌みたらしく冷やしながら去っていった。登校時刻の1時間前…